「マチネの終わりに」平野啓一郎にちょっと心に留めたい言葉の数々。
「
人は、変えられるものは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」(クラシック・ギタリスト蒔野聡史がフランスRFP通信の記者小峰洋子に)
「午後の演奏会(マチネ)」
「みんな、自分の人生の主役になりたいって考える。それで、苦しんでる。自分もずっとそうだったけど、今はもう違う。蒔野さんの担当になった時、わたしはこの人が主役の人生の”名脇役”になりたいって、心から思ったっていうの。」「彼女(三谷早苗)は、蒔野さんが主演を務める人生に、ずっと、すごく重要な脇役としてキャスティングされ続けるなら、自分の人生はきっと充実したものになるって言うの。考えただけでも胸が躍る。だから、蒔野さんのためなら何だってできるって。・・・」(洋子が蒔野に)
「彼女みたいに誰か一人の人生の助演女優賞を目指すっていうタイプでもないし、色んな人が主役の人生の中で、ちょっと味のある脇役を務められれば十分かなって。そういうのも、案外、楽しそう。」
「洋子は、是永のいかにも悪気のない憶測を、あれ以来気に懸けていた。
一旦芽吹くと、洋子の中には、
夏休みの朝顔のように三谷の存在が
幾つもの鮮やかな花を咲かせ、感情の隙間にその蔦を絡ませていった。
一つ一つの花は、決して長くは保たなかったが、蕾の数はなかなか減らず、どうやらこの夏いっぱいは続きそうだった。ーーー蒔野に会うまでは」
「自由意志というのは、未来に対してはなくてはならない希望だ。自分には、何かができるはずだと、人間は信じる必要がある。そうだね?しかし洋子、だからこそ、過去に対しては悔恨となる。何か出来たはずではなかったか、と。運命論の方が、慰めになることもある。」(映画監督の洋子の父が洋子に)
「マチネの終わりに」平野啓一郎著
posted by かんちゃん at 11:56
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日記