奥泉光著『シューマンの指』(講談社、2010.7.23第1刷、P314)の中から。
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シューマン<幻想曲ハ長調>第一楽章「徹頭徹尾幻想的に、情熱的に演奏すべく」
修人が「僕は、この音符の陰に、何かが隠れているような気がするんだ」と述べた。シューマンのピアノ曲に執拗に現れる音列である。「クララの動機」とも呼ばれるこの楽句が、調性をぽやかしたまま進み行く姿は、さながら夢の霞が凝ってできた瑞雲から飛び出した一羽の鳥のようである。
(演奏が終わる)
―――その刹那だった
人の悲鳴が、一筋、暗がりを刺し貫いたのだった。
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瑞雲から飛び出す鳥。幻想的。
写真は、クロユリ。
2011年06月03日
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